三菱UFJの376億円がノックインに突入

三菱UFJ銀行発行のノックイン条項がついたファンドがノックインに突入。


昨年の6月にスタート価格17789円で発行されたファンド(376億円)が、今日20パーセント下落の14231円で「ノックイン条項」が発動することになった。


1年半の間、日経平均株価が20%以上下落さえしなければ、590円の分配をもらえるというのは、魅力的だ。1年当たりに換算すれば、年4%程度の利息に相当する。定期預金や個人向け国債よりもよっぽどよい。


 ノックインの条件を満たしてしまうと、元本は保証されず、日経平均に連動するインデックスファンドとして運用が継続される。購入した客は、値下がりした株式ファンドを受け取らざるをえない。ノックイン価格は、天国と地獄のさかいめだ。


ノックイン条項が発動されても、2008年の5月26日または11月21日に、日経平均が17789円を超えていれば元本は確保される。ただ、現実的に考えれば、あと10ヶ月の間に株価が20%上昇するというのは望み薄だろう。


逆に17789円を超えれば、ノックインに突入しなかったときよりもリターンは多くなるのだが、それは無理だろう。

償還金額=額面金額×最終日経平均株価÷当初日経平均価格


したがって今日の日経平均が最終日経平均とすると元本が80パーセント以下になってしまう(利息は除く)。


おそらくこの仕組みをわかってこの商品を買ってる人は、ごく一部だろう。利息が高いということで買っていて、元本われなんて意識していない人が多いだろう。


償還期には、お客さんが怒り出して、社会問題化されることも十分に考えられる。


高い利息をえさにしてこんな商品を売ってはいけないだろう。大手の銀行がこんな商品を売るなんてとんでもないことである。


参照

http://reindeer.cocolog-nifty.com/money/2008/01/post_a44f.html


https://www.mizuho-isec.co.jp/treasury/word/word05_2.html

日経平均ノックイン価格に近づいたことによる相場波乱要因とは?

1月9日

株価急落によって日経平均ノックイン債に絡んだ先物売りが出るとの思惑が、投資家の間で広がっています。1月8日付けの日本経済新聞マーケット総合面に、『ノックインに警戒感』という記事が出ていましたから、ご覧になった方もいらっしゃるのではないかと思います。

日経平均ノックイン債の「ノックイン」とは、「ノックイン条項がついたリスク限定型ファンド」といわれる金融商品で、日経平均株価が一定価格(ノックイン価格)を下回ることを指します。

そして、日経平均の14200円から14300円程度に「ノックイン条項」が設定されているものが多いことから、この水準に達したことで日経先物売りによる一段の下落が考えられていることになります。

では、なぜノックインすることで日経先物に売りが出るのかということになるのですが、その前に日経平均ノックイン債の仕組みを知る必要があります。

日経平均ノックイン債を簡単にいえば、買ってから一定期間の間に、日経平均が2〜3割以上下がらなければ、3〜4%程度の利息を支払います、というよう条件がついた投資信託の一種です。商品によって条件が異なるわけですが、買った人は一定以上の下落がない、つまりノックインしなければ、高い運用利回りを受け取れるということになります。

しかし、期間内にノックインしますと、元本が保証されずに日経平均に連動する投資信託になってしまいます。つまり、日経平均ノックイン債購入者は、元本が値下がりした株式ファンドになるということです。

どうして高い利回りがもらえるのかといえば、実は日経平均オプションなどのデリバティブを組み合わせた商品で、日経平均ノックイン債購入者は、日経平均プットオプションを売ってオプション料(プレミアム)で利回りを受け取る仕組みになっています

オプションについて簡単に説明しますと、オプションとは買ったり売ったりする権利のことで、オプションの売買は権利を売買することです。コールとプットがあり、コールが買う権利、プットが売る権利です。

たとえば、日経平均15000円のコールオプションを買うとしますと、日経平均がいくらであっても日経平均を15000円で買うことができる権利を持っているということになります。

今の日経平均が10000円であろうと20000円であろうと15000円で買う権利を持っているわけです。もし日経平均が20000円になったとすれば、15000円で日経平均を買うことができる権利は魅力がでます。

オプション1単位で日経平均を1つ買える権利だとすると、日経平均が20000円のとき、15000円で買う権利であるオプションは、単純に5000円の価値があるといえます。なぜなら、5000円支払って日経平均を15000円で買って、時価の20000円で売ればトントンだからです。

日経平均が10000円に下がってしまったらどうでしょうか。時価が10000円ではだれも15000円支払って日経平均を買おうとは思わないはずです。ただし、オプションは権利ですので、日経平均15000円のコールオプションを買った投資家は権利を使わなくてもよいのです。

そうなると、上がったときだけ利益がもらえるので、誰でも勝てる夢のような金融商品となってしまいます。そんなに甘いことはなく、上がったときだけ利益がもらえる権利の対価としてオプション料(プレミアム)が発生します。

つまり、オプションを買った投資家は、権利行使しなければオプション料(プレミアム)以上の損はしないとなります。したがって、オプションを買うということは権利を買うことで、損失は支払った金額に限定されます。

反対にオプションを売るということは、権利に応じるということになるのでオプション料(プレミアム)を受け取る側になるということです。

たとえば、前述の反対に日経平均15000円のコールオプションを売るとしますと、日経平均がいくらであっても日経平均を15000円で買うことができる権利に応じるということですから、もし20000円になったら、5000円支払わなくてはいけません。しかし、15000円以下であればもらったオプション料(プレミアム)が儲かることになります。

日経平均ノックイン債購入者は、このオプションのプット(下がると利益になる権利)を『売って』います。つまり、一定の価格まで下がらなければ、オプション料(プレミアム)がもらえるので。これが利回りになるということです。

このように、オプションの売りポジションを取っているといえますから、一定価格を下回る(ノックイン)とポジションの損失が拡大することになります。そうなると証券会社などの運用者は、日経先物を売るなどのヘッジ(損失回避のための保険)が必要になって、株式市場の下落につながることになります。

そして、ヘッジファンドなどの投機筋がノックインによって出る先物の売りを見越して仕掛け売りを行う思惑が出てくるので、相場波乱の要因になっているということになります。

下値不安をあおるような材料ですが、同じようなことが2006年の6月頃にも起きています。当時の株式市場が急落した背景には、高水準の信用買い残裁定買い残の解消が指摘されていましたが、それに加えてノックイン価格に近づいたことが相場波乱要因として指摘されました。

そしてご存知のように、2006年の急落局面は6月で底を打ってから反発しています。現在のノックインによって先物売りが大量に出るということも、一部では売り方の材料にされているとの指摘が見られています。

また、今週末は1月オプションの権利行使最終日ですので、思惑が先行しやすいとも考えられます。行き過ぎた下げ相場になりますと、メディアは悲観的な話を取り上げやすくなりますが、下がっているときに下がりそうな話をした方が受けますし、真実味が出るからだと思います。したがって、悲観的な話ばかりが目に付いてきますと、相場が底を打つことも多いのではないかと思います。

ただし、このことは上昇の時にもいえますから、株式市場が高値で明るい見通しが出揃っていても、過信はしない方が無難です。投資家が強気か弱気に大きく傾いたときに、相場は反転するのだと思います。

レポート担当 市原義明

株・投資に役立つ『ケンミレ株式情報』のコンテンツ(毎日更新)
【チャートに強くなろう】第13回 銘柄ごとの値動きにあわせて精度up!勝利へ導く“テクニカル指標の最適化”
【負けない投資家になる】第23回 一般的な抵抗ラインと一緒に株価の転換点を予測する方法(前編)


1月9日

株価急落によって日経平均ノックイン債に絡んだ先物売りが出るとの思惑が、投資家の間で広がっています。1月8日付けの日本経済新聞マーケット総合面に、『ノックインに警戒感』という記事が出ていましたから、ご覧になった方もいらっしゃるのではないかと思います。

日経平均ノックイン債の「ノックイン」とは、「ノックイン条項がついたリスク限定型ファンド」といわれる金融商品で、日経平均株価が一定価格(ノックイン価格)を下回ることを指します。

そして、日経平均の14200円から14300円程度に「ノックイン条項」が設定されているものが多いことから、この水準に達したことで日経先物売りによる一段の下落が考えられていることになります。

では、なぜノックインすることで日経先物に売りが出るのかということになるのですが、その前に日経平均ノックイン債の仕組みを知る必要があります。

日経平均ノックイン債を簡単にいえば、買ってから一定期間の間に、日経平均が2〜3割以上下がらなければ、3〜4%程度の利息を支払います、というよう条件がついた投資信託の一種です。商品によって条件が異なるわけですが、買った人は一定以上の下落がない、つまりノックインしなければ、高い運用利回りを受け取れるということになります。

しかし、期間内にノックインしますと、元本が保証されずに日経平均に連動する投資信託になってしまいます。つまり、日経平均ノックイン債購入者は、元本が値下がりした株式ファンドになるということです。

どうして高い利回りがもらえるのかといえば、実は日経平均オプションなどのデリバティブを組み合わせた商品で、日経平均ノックイン債購入者は、日経平均プットオプションを売ってオプション料(プレミアム)で利回りを受け取る仕組みになっています

オプションについて簡単に説明しますと、オプションとは買ったり売ったりする権利のことで、オプションの売買は権利を売買することです。コールとプットがあり、コールが買う権利、プットが売る権利です。

たとえば、日経平均15000円のコールオプションを買うとしますと、日経平均がいくらであっても日経平均を15000円で買うことができる権利を持っているということになります。

今の日経平均が10000円であろうと20000円であろうと15000円で買う権利を持っているわけです。もし日経平均が20000円になったとすれば、15000円で日経平均を買うことができる権利は魅力がでます。

オプション1単位で日経平均を1つ買える権利だとすると、日経平均が20000円のとき、15000円で買う権利であるオプションは、単純に5000円の価値があるといえます。なぜなら、5000円支払って日経平均を15000円で買って、時価の20000円で売ればトントンだからです。

日経平均が10000円に下がってしまったらどうでしょうか。時価が10000円ではだれも15000円支払って日経平均を買おうとは思わないはずです。ただし、オプションは権利ですので、日経平均15000円のコールオプションを買った投資家は権利を使わなくてもよいのです。

そうなると、上がったときだけ利益がもらえるので、誰でも勝てる夢のような金融商品となってしまいます。そんなに甘いことはなく、上がったときだけ利益がもらえる権利の対価としてオプション料(プレミアム)が発生します。

つまり、オプションを買った投資家は、権利行使しなければオプション料(プレミアム)以上の損はしないとなります。したがって、オプションを買うということは権利を買うことで、損失は支払った金額に限定されます。

反対にオプションを売るということは、権利に応じるということになるのでオプション料(プレミアム)を受け取る側になるということです。

たとえば、前述の反対に日経平均15000円のコールオプションを売るとしますと、日経平均がいくらであっても日経平均を15000円で買うことができる権利に応じるということですから、もし20000円になったら、5000円支払わなくてはいけません。しかし、15000円以下であればもらったオプション料(プレミアム)が儲かることになります。

日経平均ノックイン債購入者は、このオプションのプット(下がると利益になる権利)を『売って』います。つまり、一定の価格まで下がらなければ、オプション料(プレミアム)がもらえるので。これが利回りになるということです。

このように、オプションの売りポジションを取っているといえますから、一定価格を下回る(ノックイン)とポジションの損失が拡大することになります。そうなると証券会社などの運用者は、日経先物を売るなどのヘッジ(損失回避のための保険)が必要になって、株式市場の下落につながることになります。

そして、ヘッジファンドなどの投機筋がノックインによって出る先物の売りを見越して仕掛け売りを行う思惑が出てくるので、相場波乱の要因になっているということになります。

下値不安をあおるような材料ですが、同じようなことが2006年の6月頃にも起きています。当時の株式市場が急落した背景には、高水準の信用買い残裁定買い残の解消が指摘されていましたが、それに加えてノックイン価格に近づいたことが相場波乱要因として指摘されました。

そしてご存知のように、2006年の急落局面は6月で底を打ってから反発しています。現在のノックインによって先物売りが大量に出るということも、一部では売り方の材料にされているとの指摘が見られています。

また、今週末は1月オプションの権利行使最終日ですので、思惑が先行しやすいとも考えられます。行き過ぎた下げ相場になりますと、メディアは悲観的な話を取り上げやすくなりますが、下がっているときに下がりそうな話をした方が受けますし、真実味が出るからだと思います。したがって、悲観的な話ばかりが目に付いてきますと、相場が底を打つことも多いのではないかと思います。

ただし、このことは上昇の時にもいえますから、株式市場が高値で明るい見通しが出揃っていても、過信はしない方が無難です。投資家が強気か弱気に大きく傾いたときに、相場は反転するのだと思います。

gooマネーより

1月9日

株価急落によって日経平均ノックイン債に絡んだ先物売りが出るとの思惑が、投資家の間で広がっています。1月8日付けの日本経済新聞マーケット総合面に、『ノックインに警戒感』という記事が出ていましたから、ご覧になった方もいらっしゃるのではないかと思います。

日経平均ノックイン債の「ノックイン」とは、「ノックイン条項がついたリスク限定型ファンド」といわれる金融商品で、日経平均株価が一定価格(ノックイン価格)を下回ることを指します。

そして、日経平均の14200円から14300円程度に「ノックイン条項」が設定されているものが多いことから、この水準に達したことで日経先物売りによる一段の下落が考えられていることになります。

では、なぜノックインすることで日経先物に売りが出るのかということになるのですが、その前に日経平均ノックイン債の仕組みを知る必要があります。

日経平均ノックイン債を簡単にいえば、買ってから一定期間の間に、日経平均が2〜3割以上下がらなければ、3〜4%程度の利息を支払います、というよう条件がついた投資信託の一種です。商品によって条件が異なるわけですが、買った人は一定以上の下落がない、つまりノックインしなければ、高い運用利回りを受け取れるということになります。

しかし、期間内にノックインしますと、元本が保証されずに日経平均に連動する投資信託になってしまいます。つまり、日経平均ノックイン債購入者は、元本が値下がりした株式ファンドになるということです。

どうして高い利回りがもらえるのかといえば、実は日経平均オプションなどのデリバティブを組み合わせた商品で、日経平均ノックイン債購入者は、日経平均プットオプションを売ってオプション料(プレミアム)で利回りを受け取る仕組みになっています

オプションについて簡単に説明しますと、オプションとは買ったり売ったりする権利のことで、オプションの売買は権利を売買することです。コールとプットがあり、コールが買う権利、プットが売る権利です。

たとえば、日経平均15000円のコールオプションを買うとしますと、日経平均がいくらであっても日経平均を15000円で買うことができる権利を持っているということになります。

今の日経平均が10000円であろうと20000円であろうと15000円で買う権利を持っているわけです。もし日経平均が20000円になったとすれば、15000円で日経平均を買うことができる権利は魅力がでます。

オプション1単位で日経平均を1つ買える権利だとすると、日経平均が20000円のとき、15000円で買う権利であるオプションは、単純に5000円の価値があるといえます。なぜなら、5000円支払って日経平均を15000円で買って、時価の20000円で売ればトントンだからです。

日経平均が10000円に下がってしまったらどうでしょうか。時価が10000円ではだれも15000円支払って日経平均を買おうとは思わないはずです。ただし、オプションは権利ですので、日経平均15000円のコールオプションを買った投資家は権利を使わなくてもよいのです。

そうなると、上がったときだけ利益がもらえるので、誰でも勝てる夢のような金融商品となってしまいます。そんなに甘いことはなく、上がったときだけ利益がもらえる権利の対価としてオプション料(プレミアム)が発生します。

つまり、オプションを買った投資家は、権利行使しなければオプション料(プレミアム)以上の損はしないとなります。したがって、オプションを買うということは権利を買うことで、損失は支払った金額に限定されます。

反対にオプションを売るということは、権利に応じるということになるのでオプション料(プレミアム)を受け取る側になるということです。

たとえば、前述の反対に日経平均15000円のコールオプションを売るとしますと、日経平均がいくらであっても日経平均を15000円で買うことができる権利に応じるということですから、もし20000円になったら、5000円支払わなくてはいけません。しかし、15000円以下であればもらったオプション料(プレミアム)が儲かることになります。

日経平均ノックイン債購入者は、このオプションのプット(下がると利益になる権利)を『売って』います。つまり、一定の価格まで下がらなければ、オプション料(プレミアム)がもらえるので。これが利回りになるということです。

このように、オプションの売りポジションを取っているといえますから、一定価格を下回る(ノックイン)とポジションの損失が拡大することになります。そうなると証券会社などの運用者は、日経先物を売るなどのヘッジ(損失回避のための保険)が必要になって、株式市場の下落につながることになります。

そして、ヘッジファンドなどの投機筋がノックインによって出る先物の売りを見越して仕掛け売りを行う思惑が出てくるので、相場波乱の要因になっているということになります。

下値不安をあおるような材料ですが、同じようなことが2006年の6月頃にも起きています。当時の株式市場が急落した背景には、高水準の信用買い残裁定買い残の解消が指摘されていましたが、それに加えてノックイン価格に近づいたことが相場波乱要因として指摘されました。

そしてご存知のように、2006年の急落局面は6月で底を打ってから反発しています。現在のノックインによって先物売りが大量に出るということも、一部では売り方の材料にされているとの指摘が見られています。

また、今週末は1月オプションの権利行使最終日ですので、思惑が先行しやすいとも考えられます。行き過ぎた下げ相場になりますと、メディアは悲観的な話を取り上げやすくなりますが、下がっているときに下がりそうな話をした方が受けますし、真実味が出るからだと思います。したがって、悲観的な話ばかりが目に付いてきますと、相場が底を打つことも多いのではないかと思います。

ただし、このことは上昇の時にもいえますから、株式市場が高値で明るい見通しが出揃っていても、過信はしない方が無難です。投資家が強気か弱気に大きく傾いたときに、相場は反転するのだと思います。

gooマネーより

ベンチャー企業などを支えるリスクマネー

「日本では、新規公開した株式の買い手は8割が個人。逆に米国では8割が機関投資家だ。ベンチャー企業などへのリスクマネーは、本来プロの機関投資家が供給するべきだ。専門性を持った人材がいるし、相応の調査能力もあるからだ」

 「ところが日本では機関投資家がリスクを恐れ、東証マザーズに上場した企業の株式でも1年間は買ってはいけないといった内規があったりする。
新興企業はお金を集めにくく、結果として不適切な資金などが入り込む余地が 生まれてしまう。リスクを取ってリターンを得るという機関投資家の本来の役割が発揮されてないことがもたらしたゆがみともいえる」



松本大

日経新聞1月10日

社説ウオッチング:元日の論調 「解散」分かれた主張

社説ウオッチング:元日の論調 「解散」分かれた主張



◇「ねじれ解消、選挙で」−−毎日・朝日

 ◇「急ぐな」−−読売

 今年はどんな1年になるのか。そして私たちは、どう対処していったらよいのか。元日の各紙社説には、そんな意味が込められている。報道機関、言論機関である新聞社の読者に向けた年頭のメッセージでもある。

 総じていえば、今年は日本を取り巻く国際情勢認識に関しては各紙共通していたと思われる。イラク政策の行き詰まりやドル安に象徴される米国の混迷。一方で中国やロシアなどが台頭し、世界は米国一強時代から多極化へ向かいつつあるという認識だ。

 だが、その処方せんとなると、それぞれ異なる。とりわけ現下の国内政治課題である衆参ねじれ国会にどう対応するのか、年内の可能性が高いといわれる衆院解散・総選挙をどう位置づけるかは、くっきりとスタンスが分かれた。

 ◇状況認識は共通

 「身捨つるほどの 祖国はありや」−−。

 毎日は社説の冒頭で団塊世代のヒーローの一人だった寺山修司の短歌を引き、あえて「祖国」という言葉を用いて「祖国を実感できる年に」と書いた。

 広がる衰退気分。年金の先行きさえ定かでない。防衛次官汚職や食品偽装など官も民も責任感が欠如している。多くの社説が指摘するところだ。

 そんな中、毎日が掲げたキーワードが「公」。公共心や公共への責任感の回復といった意味だ。それは無論、戦前の国家優先主義の復活ではない。平等な立場でオープンな議論をたたかわせながら血肉になっていくような「新しい公」を育てたい。そんな発想が大切だという提案である。

 そうした議論が最も必要なはずの国会は、衆参のねじれで確かに心もとない。しかし、その解消策は自民党民主党の大連立ではない。ねじれの解消も民意=選挙にゆだねるべきだと主張するとともに、ねじれの緊張関係の中で合意を目指して議論を練り上げていくのが、政治における「公」の回復だ−−と毎日は指摘した。

 国内政治問題にほぼ特化したのが朝日社説だ。

 今年は1988年、リクルート事件を機に政治改革の必要性が叫ばれ始めて20年になる。朝日は次の総選挙で民主党が勝てば衆参のねじれは消え、政治改革の狙いだった政権交代も実現すると指摘。逆に民主党が負けたら「参院の多数を振りかざさず、謙虚に政策調整に応じる」といったルールの確立を求めている。

 「民主党敗北なら国会対応見直し」は毎日も昨年末、「視点」欄で提案した方法の一つだ。毎日、朝日は選挙前の自民と民主の大連立に反対するとともに、できるだけ早く衆院解散・総選挙を行うべきだとの主張でも一致している。

 これに正反対なのが読売だ。昨夏、読売は大連立を社説で提唱。読売新聞グループ本社会長兼主筆渡辺恒雄氏が大連立構想の仕掛け人だったのも周知の通りだ。

 ◇日経・東京はテーマ絞る

 読売元日社説は多極化世界に変動する中、機動的に日本外交を展開するには国内政治の安定が前提になると強調。「大連立」の文字はなかったが、福田政権に対して「野党の問責決議を恐れる理由は、まったくない」としたうえで、「衆院の任期は、あと2年近くある。解散・総選挙を急ぐ必要はない」と主張した。変革より安定が大事ということなのかもしれない。

 産経は論説委員長名の論文を掲載した。日米関係の重要性を強調する点は読売と同じだが、福田康夫首相に対しては「世界の潮流に沿ったものであろうか。背を向けたものではないか」と厳しい。

 論文は「つつましい方丈に無限の宇宙を見るような日本古来の節度ある生き方を、いまこそよみがえらせ、その知恵と哲学を世界に伝えたい」と書く。毎日の「新しい公」との違いは明白だ。産経は保守回帰路線だった安倍晋三前首相の方が望ましかったのだと思われる。

 このほか、日経は地球温暖化、東京は格差=貧困層の増加問題に絞り込んで元日社説を展開した。

 ◇グローバル化の影

 海外にも目を向けてみる。

 欧米主要紙は元日を特別重視することなく、ほとんど通常の社説を掲載。これに対し、8月に北京五輪が開かれる中国の人民日報は「新しい年。五輪の聖火が東方に輝き、中華民族百年の五輪の夢が現実となる」と記す。高揚した様子が伝わってくるのは確かだ。

 今年、建国60周年を迎える韓国の有力紙・朝鮮日報は、先の大統領選を踏まえ、「肯定の炎を」と前向きな姿勢を国民に訴え、「国の存亡は教育にかかる」と説く。日中、日韓関係は今、再構築に向かっている。ともに再び偏狭なナショナリズムに陥らない1年に、と願わずにはいられない。

 もう一度、寺山修司の話を。1973年、寺山は雑誌のインタビューでこうも語っている。

 「国家というのは、すでにもうイデオロギーじゃなく行政管理上の手続きとして存在してるに過ぎないんですね。だから、科学がもっと発展して、コンピューターが管理するようになったら、人間は国というものに所属する必要がなくなるだろう、というのが、ぼくの考えなんです」(文芸春秋刊「面白半分BEST随舌選」所収)

 没後25年。テロや核拡散、無秩序な経済活動……。グローバル化の「影」が、このような形で押し寄せる時代になることを寺山は予想していただろうか。【論説委員与良正男

毎日新聞 2008年1月6日 東京朝刊

専門家が予想する08年の市場

野村證券  チーフステラジスト  岩沢誠一郎

13500〜18000円     昨年末より円高傾向で推移


東短リサーチ チーフエコノミスト  加藤出

13800〜17200円     102円〜115円


日興コーディアル証券 エクイティ部部長  西広

14000〜18500円     105円から120円


UBS証券チーフステラジスト 平川昇二

14000〜20000円     105円から120円


日本総合研究所チーフエコノミスト 藤井英彦

14000〜16000円     100円から110円


三菱UFJ証券投資情報部長 藤戸則弘

14000〜18000円     105から118円


大和総研チーフステラジスト 三宅一弘

14000〜19500円     105から115円


市場の専門家には、春過ぎまで株価の低迷と円高傾向が続くとの見方が多い。本格的な株価回復と円相場の安定は夏以降になるとの予想が強まっている。


(今日の朝日新聞の朝刊より)



斉藤精一郎

日本株は89年大納会の最高値(3万8915円)から現在(1万5307円)までで、十二分にバブルを清算し尽くしている。だから、日経平均は昨年末の1万5300円前後がほぼ実質的な「大底」であり、それ以下は世界的な株大調整の「お付き合い」とみておくべきだ。したがって、08年にNYダウが仮に1万ドル前後に暴落し、日経平均が「連れ下げ」で1万4000円を割り込む(一時的な最安値は1万3500円前後か)としても、そこはすでにバブル清算済みの「底値圏」だから、後は狼狽せずに反転上昇するのを待つとの冷静さを持てばよい。


http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/saito.cfm?i=20071227c1000c1&p=3

新興株式市場 大規模な再編を追求すべきだ

新興株式市場 大規模な再編を追求すべきだ(12月30日付・読売社説)


ベンチャー企業育成の場である新興企業向け株式市場にも、再編・統合の波が押し寄せてきたようだ。この機会に市場のあり方を見直す必要があろう。

 日本証券業協会が、傘下に持つジャスダック証券取引所の株式を、大阪証券取引所へ売却する協議に入ることを決めた。ジャスダック大証新興市場ヘラクレス」との統合を視野に入れている。

 相場の不振が続き、ジャスダックは9月中間決算で最終赤字に転落した。単独での存続は厳しいと判断した日証協は、東京証券取引所との経営統合なども検討してきたが、東証は統合を断った。

 ジャスダック内には単独存続を求める声も根強い。流動的な面も残るが、当面は大証との交渉が軸になりそうだ。

 ジャスダック以外の新興市場でも、株価や売買高の低迷が長期化している。東証マザーズ市場やヘラクレス市場の株価指数は、ピークである2006年1月の3分の1以下の水準だ。

 06年1月のライブドア事件新興市場の株価は急落し、個人投資家の市場離れが指摘された。それが、いまだに尾を引いている。その一因は市場の乱立だ。

 1999年以降の設置ラッシュで、今では国内6証券取引所のすべてに新興市場ができた。市場間の企業誘致競争に、株式公開の手数料稼ぎを狙った証券会社の安直な姿勢も加わって、新規上場の審査が甘くなり、上場企業の質の低下が指摘されている。

 上場から短期間に、業績予想の大幅な修正を繰り返すなど、投資家が安心して株を買えないような企業も目立つ。名古屋証券取引所新興市場セントレックス」では、証券取引等監視委員会の検査で、上場審査が適切に実施されていないケースが見つかった。

 発足直後で実績がない企業に資金調達の道を開く新興市場は、東証1、2部などに比べ、そもそも上場基準が緩い。

 上場企業の収益性などが不安定で、玉石混交の市場となるのは仕方がない面がある。しかし、市場の乱立や安易な審査で、市場そのものへの信頼感が損なわれれば、取引は冷え込む。企業の育成という本来の目的も果たせなくなる。

 再編・統合で市場運営コストの効率化を図れば、上場企業の誘致に無理をする必要もなくなるだろう。

 情報技術(IT)の高度化で、企業や投資家が地理的に離れた市場を活用することは、以前と比べ、はるかに容易になった。ジャスダック大証に限らず、各証券取引所や証券業界は、さらなる市場再編を真剣に検討してはどうか。

(2007年12月30日1時43分 読売新聞)

民主党税制大綱 財源が不明の大減税案とは

民主党税制大綱 財源が不明の大減税案とは(12月27日付・読売社説)



 いかにも国民受けしそうな減税項目が並んでいる。だが、予算を組むための財源は、どこから調達しようというのか。

 民主党がまとめた税制改革大綱からは、政権を狙う責任政党の姿勢がほとんど見えない。

 典型的なのは道路特定財源の扱いだ。大綱では、地方分も含めてすべて一般財源化する。揮発油(ガソリン)税などの税率を上乗せしている暫定税率は、全面廃止すると明記した。

 暫定税率を廃止すればガソリン代は1リットルあたり25円前後も安くなる。だが、税収は国分で1兆6000億円、地方分で1兆円、それぞれ穴があく。この穴を埋める財源をどう確保するか、現実味のある答えは示せていない。

 暫定税率は、来年3月末で期限が切れる。それまでに衆参両院で税制関連法案が可決されなければ、ガソリン代は4月には下がる。

 その後に与党が衆院で関連法案を3分の2以上の多数で再議決すれば、再び元の価格に戻ることになる。

 民主党は来たるべき総選挙に向け、ガソリン価格の値下げをアピールしたいのだろう。だが、短期間のうちに価格が大きく変動すれば、国民生活に混乱を招くのは必至だ。

 所得課税では、配偶者控除や扶養控除について廃止を打ち出した。大綱の中では数少ない増税策だが、廃止で得る税収は、「子ども手当」を新設するための財源に回す。

 控除の廃止で、子供のいない世帯の多くは増税になってしまう。国民の理解を得るには相当な努力が必要だろう。

 消費税については、5%の現行税率を維持し、税収の全額を基礎年金の財源にあてる、としている。

 だが、5%の税率のうち、1%は地方消費税として地方に配分されている。加えて、国が得る消費税収からも、約3割が地方交付税の原資に回される。

 民主党案通り、消費税収がすべて年金に投入された場合、地方が現在受け取っている6兆円近い巨額な財源が失われてしまう計算だ。

 これでは、地方の財政運営は大変なことになろう。自治体は予算が組めなくなる。民主党は、地方にどう説明するつもりなのか。

 証券税制では、現行の軽減税率を、譲渡益についてはなくし、配当については残すなど、与党案よりわかりやすい項目も含まれている。与野党の基本的な考え方には、大きな違いがないとの指摘もある。今後、真剣に協議し、国民が使いやすい税制をつくり上げてほしい。

(2007年12月27日2時8分 読売新聞)