民主党税制大綱 財源が不明の大減税案とは

民主党税制大綱 財源が不明の大減税案とは(12月27日付・読売社説)



 いかにも国民受けしそうな減税項目が並んでいる。だが、予算を組むための財源は、どこから調達しようというのか。

 民主党がまとめた税制改革大綱からは、政権を狙う責任政党の姿勢がほとんど見えない。

 典型的なのは道路特定財源の扱いだ。大綱では、地方分も含めてすべて一般財源化する。揮発油(ガソリン)税などの税率を上乗せしている暫定税率は、全面廃止すると明記した。

 暫定税率を廃止すればガソリン代は1リットルあたり25円前後も安くなる。だが、税収は国分で1兆6000億円、地方分で1兆円、それぞれ穴があく。この穴を埋める財源をどう確保するか、現実味のある答えは示せていない。

 暫定税率は、来年3月末で期限が切れる。それまでに衆参両院で税制関連法案が可決されなければ、ガソリン代は4月には下がる。

 その後に与党が衆院で関連法案を3分の2以上の多数で再議決すれば、再び元の価格に戻ることになる。

 民主党は来たるべき総選挙に向け、ガソリン価格の値下げをアピールしたいのだろう。だが、短期間のうちに価格が大きく変動すれば、国民生活に混乱を招くのは必至だ。

 所得課税では、配偶者控除や扶養控除について廃止を打ち出した。大綱の中では数少ない増税策だが、廃止で得る税収は、「子ども手当」を新設するための財源に回す。

 控除の廃止で、子供のいない世帯の多くは増税になってしまう。国民の理解を得るには相当な努力が必要だろう。

 消費税については、5%の現行税率を維持し、税収の全額を基礎年金の財源にあてる、としている。

 だが、5%の税率のうち、1%は地方消費税として地方に配分されている。加えて、国が得る消費税収からも、約3割が地方交付税の原資に回される。

 民主党案通り、消費税収がすべて年金に投入された場合、地方が現在受け取っている6兆円近い巨額な財源が失われてしまう計算だ。

 これでは、地方の財政運営は大変なことになろう。自治体は予算が組めなくなる。民主党は、地方にどう説明するつもりなのか。

 証券税制では、現行の軽減税率を、譲渡益についてはなくし、配当については残すなど、与党案よりわかりやすい項目も含まれている。与野党の基本的な考え方には、大きな違いがないとの指摘もある。今後、真剣に協議し、国民が使いやすい税制をつくり上げてほしい。

(2007年12月27日2時8分 読売新聞)